相続基礎知識

所得税の準確定申告とは?

この記事の監修

伊藤 桜子先生

伊藤会計事務所

伊藤 桜子
九州北部税理士会 福岡支部 登録番号 第109896号
福岡県行政書士会 福岡中央支部 会員番号 13020号)

1990年 神戸大学法学部卒業。2008年 福岡市中央区薬院にて伊藤会計事務所開業。
福岡を中心に、相続税申告・生前対策相談・事業承継など累計700件以上を手掛けてきた。
相続対策や相続税法改正をテーマとしたセミナーにも多数登壇。

亡くなった人(被相続人)に所得がある場合に、法定相続人が亡くなった人(被相続人)に代わって行う所得税の申告を「準確定申告」といいます。

亡くなった人(被相続人)が、例年不動産収入や事業収入により確定申告を行っていた場合には、原則として準確定申告を行う必要があります。

ここでは、準確定申告が必要となるケースや申告期限などについて解説していきます。

1.準確定申告の注意点

準確定申告は、通常の確定申告とはさまざまな点で取り扱いが異なります。

(1)申告期限

通常、所得税の確定申告は毎年1月1日から12月31日までの1年間の収入を翌年の2月16日から3月15日までの間に申告・納税をすることになっています。

準確定申告の申告・納税期限は、相続開始を知った日の翌日から4か月以内です。

たとえば、3月1日に死亡した場合は、7月1日が期限となります。

(2)計算範囲

通常、所得税の確定申告は毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた収入を計算します。

準確定申告の場合は、死亡した年の1月1日から死亡日までの収入を計算します。

また、死亡日が1月1日から3月15日の場合、前年分・本年分の2年分の準確定申告が必要となるケースがあります。

たとえば、令和6年3月1日に死亡した場合、以下の準確定申告が必要となります。

①令和5年分(令和5年1月1日から令和5年12月31日)の準確定申告

②令和6年分(令和6年1月1日から令和6年3月1日)の準確定申告

なお、2年分の準確定申告が必要となった場合の申告期限は、通常の確定申告期限3月15日ではなく、前年分・本年分を合わせて相続開始を知った日の翌日から4か月以内となります。

(3)申告義務者

準確定申告の納税義務者は「相続人等」です。

相続人等が2人以上いる場合は、各相続人が連名により準確定申告書を提出することになります。

各相続人が別々に提出することもできますが、その場合は各自で申告した内容を他の相続人等に通知し、内容を統一させる必要があります。

(4)提出先

準確定申告の提出先は、亡くなった人(被相続人)が住んでいた住所地を管轄する税務署です。

(5)所得控除の適用

①医療費控除の対象となるのは、死亡の日までに亡くなった人(被相続人)が支払った医療費です。

死亡後に相続人等が支払った医療費は準確定申告において医療費控除の対象に含めることはできません。(相続税の債務控除となります。)

②社会保険料控除、生命保険料控除、地震保険料控除等の対象となるのは、死亡の日までに亡くなった人(被相続人)が支払った保険料等の額です。

③配偶者控除や扶養控除等の適用の有無に関する判定は、死亡の日の現況により行います。

ただし、扶養対象者の合計所得金額を判定する際には、1年間の見積額を計算する必要があります。

なお、配偶者控除額、配偶者特別控除額および扶養控除額の月割計算等は行いません。

2.準確定申告が必要なケース

準確定申告が必要になる人は主に以下に該当する人です。

  • 2か所以上から給与を受け取っていた人
  • 給与収入が2,000万円を超える人
  • 公的年金等の収入が400万円を超える人
  • 不動産所得や事業所得がある人
  • 不動産や株式を売却した人 など

また、準確定申告をする義務がない人でも、給与や年金から所得税の源泉徴収がされている場合や医療費控除がある場合など、準確定申告を行うことにより所得税が還付となる場合があります。

ただし、準確定申告により還付となった所得税は、相続財産に加算する必要がある点には注意が必要です。

3.準確定申告の必要書類

準確定申告には以下の書類が必要です。

  1. 確定申告書
  2. 収支内訳書/青色申告決算書
  3. 確定申告書付表(相続人が2人以上の場合)
  4. 給料や年金の源泉徴収票
  5. 生命保険等の控除証明書
  6. 医療費の領収書
  7. 委任状(還付金の受領を相続人の代表者が行う場合)

各種申告書に関しましては、国税庁のホームページよりダウンロードすることが可能です。

参考URL:【国税庁HP】確定申告書

参考URL:【国税庁HP】準確定申告書の付表

参考URL:【国税庁HP】委任状

(1)確定申告書

準確定申告では、通常の確定申告書と同じ様式の申告書を使用します。

通常の確定申告書に「準確定」と記載し、亡くなった人(被相続人)の氏名で申告書を作成します。

※申告書作成の詳細については国税庁ホームページに記載の手引きをご参照ください。

《第一表》

《第二表》

(2) 収支内訳書/青色申告決算書

亡くなった人(被相続人)に事業所得や不動産所得がある場合には、収支内訳書や青色申告決算書の提出も必要となります。

こちらも通常の確定申告書と同じ様式の申告書を使用します。

《青色申告決算書(一般用)》

(3)確定申告書付表

相続人が2人以上の場合に作成が必要となります。

付表には各相続人等の氏名、住所、亡くなった人(被相続人)との続柄などを記載します。

《付表》

(4)給料や年金の源泉徴収票

亡くなった人(被相続人)に給与所得や年金の受給がある場合に必要です。

公的年金は受給停止手続き後、源泉徴収票が届くまでに2~3ヶ月ほどかかるため、早めに手続きを行う必要があります。

(5)生命保険等の控除証明書

亡くなった人(被相続人)が死亡日までに支払った保険料等が控除の対象となります。

控除証明書の種類は、生命保険料・社会保険料・地震保険料・小規模共済等掛金などがあります。

(6)医療費の領収書

亡くなった人(被相続人)が死亡日までに支払ったものが医療費控除の対象となります。

(7)委任状(還付金の受領を相続人の代表者が行う場合)

準確定申告により所得税が還付となる場合に、還付金の受領を相続人代表者がまとめて受け取る場合に必要です。

4.まとめ

準確定申告は相続開始を知った日の翌日から4ヶ月以内に提出・納税を行う必要があります。

相続人の中に確定申告書作成の経験がある方がいらっしゃる場合には、それほど難しい手続きではありませんが、申告手続きに不慣れな方には申告期限の4ヶ月はあっという間に感じられるでしょう。

準確定申告の作成には、相続人全員の協力が不可欠である点を考慮すると、早めに手続きに取り掛かることが重要となります。

準確定申告がそもそも必要なのか、どこまでを亡くなった人(被相続人)の収入や所得控除として計算する必要があるのか、などのご不明な点がある場合には、相続に強い税理士へご相談することをおすすめいたします。

当事務所では、相続の初回無料相談を行っております。

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