不動産相続

相続した不動産の名義変更の費用は誰が支払う?相続登記にかかる費用と費用を抑える方法を解説

この記事の監修

伊藤 桜子先生

伊藤会計事務所

伊藤 桜子
九州北部税理士会 福岡支部 登録番号 第109896号
福岡県行政書士会 福岡中央支部 会員番号 13020号)

1990年 神戸大学法学部卒業。2008年 福岡市中央区薬院にて伊藤会計事務所開業。
福岡を中心に、相続税申告・生前対策相談・事業承継など累計700件以上を手掛けてきた。
相続対策や相続税法改正をテーマとしたセミナーにも多数登壇。

相続した不動産の名義を変更する手続きを相続登記といいます。

相続登記にかかる費用をだれが負担するかについて、法律上は特に決まりがありません。

一般的には、不動産を引き継ぐ人が負担することが多く、相続人で話し合って決めることになります。

今回は相続登記に必要となる3つの費用について解説します。

どのような費用がかかるのかを把握し、相続登記を進めてください。

また、費用を抑える方法についても紹介しますので合わせてご確認ください。

 

相続した不動産の名義変更(相続登記)にかかる主な3つの費用

相続によって取得した不動産の名義変更(相続登記)では、手続きに必要な書類の取得費用、登録免許税、司法書士に依頼する場合の報酬の3つが主な費用です。

通常、不動産を取得した際には上記の費用に加え不動産取得税という税金が発生しますが、相続による取得の場合は不動産取得税は課税されません。

(1)必要書類の取得費用

相続登記に必要となる書類のうち、市区町村や法務局で取得するものには発行手数料がかかり、トータルすると数千円~数万円ほど必要になります。

主な書類の発行手数料は1通につき200円~750円ほどで、各手数料は市区町村によって異なります。

書類名 1通当たりの手数料
戸籍謄本 450円
除籍謄本 750円
改正原戸籍 750円
住民票の写し(除票も含む) 300円~500円
戸籍の附票 300円
印鑑証明書 200円~400円
固定資産評価証明書/名寄帳 200円~400円
登記簿謄本(登記事項証明書) 600円

手続きに必要な書類を郵送で取得する場合には、追加で郵送料(往復分)がかかり、上記手数料は定額小為替で支払う必要があります。

1通当たりの手数料としてはすべて数百円ですが、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍を集めるとなると、平均して5通ほどは必要になります。

相続人が兄弟姉妹である場合や代襲相続人に該当する場合だと、さらに必要な戸籍等の数が増え、書類取得にかかる金額も大きくなります。

(2)登録免許税

登録免許税とは、不動産の登記を行う際に支払わなければならない税金のことで、相続登記を申請するときに法務局へ支払います。

税額は土地や建物の固定資産税評価額に税率をかけて算出します。

また、税率は不動産を取得する原因によって異なります。

取得原因 計算式
相続
(法定相続人が取得)
登録免許税=不動産の固定資産税評価額×0.4%
(4/1000)
遺贈
(法定相続人以外が取得)
登録免許税=不動産の固定資産税評価額×2.0%
(20/1000)

表に記載のとおり、法定相続人以外の人が遺贈により取得した場合、登録免許税の税率が高くなります。

なお、相続登記を促進するために一定の条件を満たす場合に登録免許税が課されない免税措置があります。(令和7年3月31日まで)

一定の条件とは以下の2つのうちいずれかに該当する場合です。

・相続により土地を取得した人が相続登記をしないで死亡した場合
・相続する土地の価額が100万円以下の場合

免税の対象となるものは土地のみで、建物は対象外ですのでご注意ください。

参考URL:【法務局HP】相続登記の登録免許税の免税措置について

(3)司法書士への報酬

相続登記を司法書士へ依頼する場合には、司法書士への報酬が発生します。

司法書士への報酬は事務所によって異なりますが、目安としては5万円~15万円ほどになることが多いようです。

※依頼する業務範囲や不動産の数などによって変動しますので、あくまでも参考程度に留めてください。

 

相続登記にかかる費用を抑えるには手続きの方法を検討する

相続登記にかかる費用はなるべく安く抑えたいと考えていらっしゃる方も多いと思います。

これまで解説した費用のうち「必要書類の取得費用」と「登録免許税」は実費でかかる費用となるため節約することができません。

つまり費用を節約するには「司法書士への報酬」で検討することになります。

司法書士に依頼する手続きを自分で行うか、一部のみを依頼するという方法にすることで、支払う報酬を減らすことが可能です。

【司法書士に依頼できる手続き】
・相続人、相続財産の調査
・戸籍等の必要書類の収集
・遺産分割協議書の作成
・不動産の相続登記手続き

自分で相続登記手続きをする

相続登記を司法書士へ依頼せずに自分で登記を完了することができれば、司法書士への報酬は不要となるため、書類の取得費用と登録免許税の必ずかかる実費部分だけで済みます。

しかし、必要書類の収集から申請書等の作成、提出までを自分で行うとなると、かなりの時間と労力がかかることが予想されます。

相続登記では遺言書がある場合と遺産分割協議での申請を行う場合とで必要となる書類が異なります。

必要書類を漏れなく収集するために何度も役所へ足を運んだり、様々な人に連絡を取ったりするなど多くの手間が発生します。

また、遺産分割協議書や登記申請書を作成するとなると専門的な知識が必要となり、少しでも記載にミスがあれば作り直しとなってしまう可能性もあります。

さらに、被相続人が所有していた不動産のうち、所有していることを知らなかった不動産があれば登記漏れが生じてしまう可能性も考えられます。

費用を抑えるためにご自身で相続登記を行う際には、上記の点に十分注意して手続きを行うようにしましょう。

相続登記手続きのうち一部のみ司法書士へ依頼する
(出来ることは自分でする)

相続登記手続きのうち、自分で出来ることがあれば、その分の司法書士報酬を抑えることができます。

戸籍等の収集の場合、被相続人が出生から死亡まで一つの市区町村から転籍がないことが明らかな場合、所在地の役所ですべての書類が揃います。

登記簿謄本の場合、被相続人が所有している不動産の所在地がわかれば、法務局で簡単に発行することができます。(どこの法務局でも発行できます)
※相続手続きに必要な書類については《不動産を相続したときの名義変更(相続登記)での必要書類とは?》にて詳しく記載しています。

 

まとめ

相続による不動産の取得では、不動産取得税は発生しませんが、名義変更(相続登記)を行うための手続きに費用が発生します。

相続登記にかかる費用のうち、必要書類を集める費用と登録免許税は節約することができません。

費用を抑える場合には、状況に応じて自分で出来ることはやりつつ、書類の作成や申請書の提出は司法書士へ依頼するなど、手続きの方法を検討してみると良いでしょう。

「相続登記の手続きは面倒だし費用もかかるため後回しに・・・」と放置してしまうと様々なリスクが発生する可能性があります。

起こりうるリスクを回避するためにも、相続登記の手続きは早めに行うようにしましょう。
※どのようなリスクがあるかは《不動産を相続したときの名義変更(相続登記)をしない場合のリスクを解説》にて詳しく記載しています。

相続登記に関するお悩みや代行を検討している方はぜひ当センターの無料相談をご利用ください。

当センターが窓口となり、相続登記のお手続きをサポートさせていただきます。
(手続きを代行する場合は提携の司法書士が業務を行います)

 

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