不動産相続

不動産を相続したときの名義変更(相続登記)をしない場合のリスクを解説

この記事の監修

伊藤 桜子先生

伊藤会計事務所

伊藤 桜子
九州北部税理士会 福岡支部 登録番号 第109896号
福岡県行政書士会 福岡中央支部 会員番号 13020号)

1990年 神戸大学法学部卒業。2008年 福岡市中央区薬院にて伊藤会計事務所開業。
福岡を中心に、相続税申告・生前対策相談・事業承継など累計700件以上を手掛けてきた。
相続対策や相続税法改正をテーマとしたセミナーにも多数登壇。

不動産を所有している人が亡くなった場合、不動産の名義変更手続きを行う必要があり、この手続きのことを「相続登記」といいます。

この相続登記は令和6年4月1日より義務化が開始されています。

これまで相続登記には期限や罰則は定められていなかったため、手続きをせずに放置していたという人も多いかもしれません。

しかし相続登記を放置することにより様々なリスクが生じる可能性があります。

今回のコラムでは相続登記をしないとどのようなリスクがあるのか、また期限内の手続きが難しいときの対処法について解説していきます。

 

相続登記をしない場合のリスク

相続登記をしない場合の6つのリスクを紹介します。

権利関係が複雑になる可能性がある(所有者の数が増える)

相続登記を放置することにより、相続人の人数が増えて権利関係が複雑となってしまう可能性があります。

相続登記を行わないと、該当の不動産は「相続人全員の共有財産」として扱われます。

世代交代が進むにつれて、所有者に該当する人が相続人の配偶者や孫、ひ孫にまで増え続け、将来的に権利関係が複雑となってしまうケースが考えられます。

いざ相続登記を行うときには、所有者全員の合意(署名や実印押印)が必要となるため、所有者全員の把握や戸籍謄本などの必要書類の収集に時間や手間、さらには費用がかかり、相続登記手続きがとても困難となってしまいます。

例えば、被相続人の子が被相続人よりも先に亡くなっている場合、その配偶者や子供が法定相続人に該当します。

上記の図の場合、被相続人名義の不動産の所有者は現段階で9名となり、これを放置しているとさらに所有者が増え続ける可能性があります。

不動産の売却や活用ができなくなる

相続した不動産を売却するときは、実際の所有者と登記簿上の所有者を一致させるために、必ず相続登記が必要となります。

相続登記をせずに時間が経過することで、新たな相続が発生するなどにより不動産の所有者が増えてしまうため、所有者全員の同意を得るのが難しくなり、売却までに時間がかかる可能性があります。

また、了承を得られずに売却できないといった問題が発生する可能性もあります。

相続した土地に賃貸アパートを建設するなどの不動産活用を行う場合でも同様に、相続登記が必ず必要となります。

不動産を差し押さえられる可能性がある

もし相続人の中に債務者(借金をしている人)がいて、その借金を滞納している場合には、債権者(お金を貸している人)に不動産が差し押さえられる可能性があります。

これを債権者による代位登記といい、相続登記がなされていない不動産でも、債務者の法定相続分については差し押さえることができます。

不動産の担保提供ができない

相続した不動産を担保に銀行から借入を行いたい場合、銀行は抵当権の設定登記を行う必要があります。

売却ができない理由と同様に、不動産が被相続人名義のままだと登記手続きを行うことができないため、融資を受けることができません。

必要書類の入手が困難となり費用も余計にかかる

相続登記を行う際には、被相続人の出生から亡くなるまでの戸籍謄本や住民票の除票などの公的書類が必要です。

これらの書類は役所での保存期間が定められており、期間が過ぎると書類を取得することができない可能性があります。

また、一次相続や二次相続の発生により被相続人や相続人の数が増えると、必要となる戸籍謄本などの書類が増え、時間も費用も余計にかかることになります。

期限が過ぎると罰則の対象となる

相続登記の義務化により、正当な理由なく期限内に相続登記を行わない場合のペナルティが設定されました。

正当な理由なく期限(※)までに相続登記を行わなかった場合「10万円以下の過料」が科される可能性があります。

※相続登記の期限については次のコラムをご参照ください《不動産を相続したときの名義変更の期限とは?》

 

相続登記手続きを期限内にできないときの対処法

相続人の誰が不動産を取得するのかが決まらない、音信不通の相続人がいる、などの理由により期限内に相続登記を行うことが難しいケースがあります。

このような場合でも、相続登記の義務を履行することができるように「相続人申告登記」という制度が新たに設けられました。

相続人申告登記で申請する内容は次の2点です。

  • 登記上の所有者が亡くなったこと
  • 自らがその相続人であること

この申請により、申し出をした相続人の氏名・住所等が登記簿上に記載されます。

この申請は、申告した相続人のみが義務を履行したものとされるため、相続人が複数いる場合には、全員がそれぞれで申請をする必要があります。(特定の相続人が他の相続人分も含めた代理申請も可能です)

その後、遺産分割協議が確定した際には、不動産を取得することになった相続人が改めて遺産分割協議が成立した日から3年以内に、その内容をふまえた登記申請をすることも義務付けられています。

 

まとめ

相続登記を放置することは、権利関係の複雑化、不動産の売却・活用不能、差し押さえのリスク、担保提供の困難、手続きの手間と費用の増加、そして罰則の対象となるなど、多くの不利益を招きます。

先祖代々相続登記をしていないような不動産の場合、過去の相続にさかのぼって所有者を特定する必要があり、個人での手続きが困難となってしまうケースも少なくありません。

他にも、不動産の売却がスムーズにできず、さらには不動産が差し押さえられたりなど、想定されるリスクは数多くあります。

これらのリスクを避けるためにも、相続が発生した方や過去に相続した不動産の相続登記がまだ済んでいない方は早急に手続きを行いましょう。

期限内の手続きがどうしても難しい場合は「相続人申告登記」という新たな制度も始まっていますので、こちらの制度の利用もご検討ください。

ご自身での相続登記の手続きが難しいと感じられる方は、ぜひ当センターの無料相談をご活用ください。

当センターが窓口となり、相続登記のお手続きをサポートさせていただきます。
(手続きを代行する場合は提携の司法書士が業務を行います)

 

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