相続基礎知識

相続税申告の期限はいつまで?もし期限が過ぎてしまった場合は?

この記事の監修

伊藤 桜子先生

伊藤会計事務所

伊藤 桜子
九州北部税理士会 福岡支部 登録番号 第109896号
福岡県行政書士会 福岡中央支部 会員番号 13020号)

1990年 神戸大学法学部卒業。2008年 福岡市中央区薬院にて伊藤会計事務所開業。
福岡を中心に、相続税申告・生前対策相談・事業承継など累計700件以上を手掛けてきた。
相続対策や相続税法改正をテーマとしたセミナーにも多数登壇。

相続税には申告書の提出期限(申告期限)があります。

相続税の申告期限は、被相続人が死亡したことを知った日(通常の場合、被相続人の死亡日)の翌日から10ヶ月以内です。

10ヶ月は長いように感じますが、実際はあっという間に期限が迫ってきます。

もし申告期限までに申告をしなかった場合には、本来の相続税のほかに加算税や延滞税がかかる他、特例規定が使えなくなる場合があるため注意が必要です。

ここでは、相続税の申告期限や申告期限に遅れそうな場合の対処法、期限後申告により発生するデメリットについて詳しく解説していきます。

1.相続税の申告期限と納付期限

相続税の申告・納税は、被相続人の死亡日の翌日から10か月以内に行うことになっています。

例えば、1月6日に死亡した場合には、その年の11月6日が申告期限になります。

なお、この期限が「土曜日・日曜日・祝日」に当たるときは、これらの日の翌日が期限とみなされます。

2.申告期限の延長の有無

相続税の申告期限の延長は原則認められていません。

ですが例外として、定められている条件を満たす場合のみ、税務署に申請をして延長できる可能性があります。

延長が申請できる主な条件は以下のとおりです。

  • 一次相続での相続人が相続税申告期間中に相次いで亡くなった場合は、一次相続の申告期限が二次相続の申告期限まで延長されます。
  • 相続人の異動があった場合
  • 遺留分減殺請求があった場合
  • 遺贈を記載する旨の遺言書が見つかった場合や遺贈の放棄があった場合
  • 相続人となる胎児が生まれた場合
  • 相続人が失踪した場合

これらの発覚が、相続税申告期限の1ヶ月以内である場合にのみ申告期限を延長することが可能です。

また、上記により延長が認められた場合、延長できる期間は最大2ヶ月間です。

災害などにあった場合の延長については国税庁ホームページにて情報が掲載されます。

3.申告期限が過ぎた場合のデメリット

相続税の申告期限が過ぎてしまった場合には、大きく2つのデメリットが生じます。

(1) 罰金がかかる

相続税に関する罰金は数種類あり、税率が高く設定されているものもあります。

罰金の種類と税率は以下のとおりです。

  • 延滞税: 延滞税とは、納付が遅れたことにより発生する利息のことをいいます。
  • 無申告加算税: 無申告加算税とは、正当な理由なく期限内に申告をしていなかった場合に課税されます。
  • 過少申告加算税: 過少申告加算税とは、申告書の内容が実際より少なく計算されていた場合に課税されます。
  • 重加算税: 重加算税とは、相続財産を隠ぺいしたり、偽ったりした場合、つまり脱税行為と認定された場合に課税されます。

(2) 特例が使えない

相続税申告にはさまざまな特例があり、それらをうまく活用することで相続税額を大幅に軽減することができます。

例えば、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減などが該当します。これらの特例を適用するためには、遺言書による分割、または法定相続人間で遺産分割協議を完了させ、期限内に申告を行うことが条件となっています。

特例の適用の有無で相続税額が大きく変わるため期限内に申告を終わらせることが重要です。

4.申告期限に遅れそうなときの対処法

申告期限に遅れそうな場合、その状況によって対処方法が変わってきます。代表的なケースごとに対処方法を確認しましょう。

(1) 遺産分割が決まらない場合

遺産分割の話し合いがなかなかまとまらず、申告期限に間に合わないことがあります。

その場合、いったん民法上の法定相続分で分割したと仮定して計算を行い、申告期限内に申告と納税を行います。

この場合、一部の特例の適用は受けることができないため、申告書と同時に「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しておきます。そうすることで遺産分割協議完了後の修正申告の際に特例の適用を受けることができます。

一度目の申告での納税額が修正申告の税額より多い場合には、「更正の請求」の手続きを行うことにより払いすぎていた相続税が還付されます。

対象の特例:

  • 配偶者の税額軽減
  • 小規模宅地等の特例
  • 特定計画山林の特例
  • 特定事業用資産の特例

(2) 財産評価が間に合わない場合

財産の数が多い場合や、財産調査に時間がかかる場合、申告期限に間に合わないことがあります。特に土地や非上場株式などの評価が難しい財産が含まれている場合、通常よりも評価に時間がかかります。

その場合は、概算での評価額で申告期限内に申告書の提出と納税を行います。

確定評価額が概算評価額よりも多くなってしまうと、「修正申告」となり増加した分の相続税に延滞税などの追徴課税が発生してしまいます。逆に、確定評価額が概算評価額よりも少なくなると「更正の請求」となり、払いすぎていた相続税が還付されます。

ただし、一度申告書を提出すると修正できない事項が多くありますので、相続財産が多い場合には、余裕をもって申告ができるように早めに税理士へ相談されることをおすすめします。

5.まとめ

ここまで相続税の申告期限、期限後申告のデメリットや対処法についてご紹介しました。

相続税の申告期限である10ヶ月は思っているよりもあっという間に過ぎてしまいます。申告期限が過ぎると、さまざまなデメリットが生じ、期限内に申告するよりも多くの税金を支払うことになりかねません。

そうならないためにも相続に対する不安が少しでもある方は、ぜひ当事務所の無料相談をご利用ください。相続に強い専門家がお客様の状況に合わせて最善のご提案をさせていただきます。また、相続税の期限後申告にも対応しております。

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当コラムは記事作成時の法令等に基づいています。 税務関連記事内では、一般的事例としての取り扱いを記載しております。例外や特例を含めすべての事例について詳細に記したものではありません。 最終的な税務判断においては、税理士または税務署へご相談ください。 また、当コラムに掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

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