生前対策

【2026年最新】デジタル遺言はいつから始まる?やり方やメリット・注意点を税理士がわかりやすく解説

この記事の監修

伊藤 桜子先生

伊藤会計事務所

伊藤 桜子
九州北部税理士会 福岡支部 登録番号 第109896号
福岡県行政書士会 福岡中央支部 会員番号 13020号)

1990年 神戸大学法学部卒業。2008年 福岡市中央区薬院にて伊藤会計事務所開業。
福岡を中心に、相続税申告・生前対策相談・事業承継など累計700件以上を手掛けてきた。
相続対策や相続税法改正をテーマとしたセミナーにも多数登壇。

「終活のために遺言書を作成したいけど、長文を手書きするのは大変・・・」と感じている親世代の方や、「親に万が一のための遺言を残してほしいけれど、負担はかけたくない」と願う子世代の方の間で今「デジタル遺言」が大きな話題となっています。

PCやスマホを使って遺言書が作れるようになる新しい制度ですが、「いつから使えるの?」「具体的にどうやるの?」と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。

本コラムでは、相続専門の税理士という立場から、デジタル遺言がいつから始まるのか、具体的なやり方について、そして必ず知っておくべきメリットや注意点をわかりやすく解説します。

要点

  • デジタル遺言とは?
    正式名称『保管証書遺言』PCやスマホで遺言書本文を作成し、データで保管できる制度です。
  • いつから使える?
    2026年6月に法律が成立。実際の本格スタートは2029年頃までに開始となります。
  • 作り方は?
    PCやスマホで文章を作成・オンライン申請し、最後に法務局で本人が「全文を声に出して読み上げる(口述)」必要があります。
  • 押印不要について
    自筆証書遺言などの押印要件が1年以内に廃止されます。ただし『全文・日付・氏名の自筆』は維持されます。
  • 今できることは?
    『自筆証書遺言書保管制度』や『公正証書遺言』を活用します。

「デジタル遺言」で何が変わる?

これまで、自分で遺言書を作成する自筆証書遺言の場合、財産目録についてはPCでの作成や通帳コピーの添付が認められていました。
しかし、「誰にどの財産を相続させるか」という遺言書の本文については、「全文を紙に手書きすること」が原則とされていました。
そのため、遺言者の想いや具体的な指示が長文になるほど、すべて手書きしなければならないという高いハードルがありました。

【具体的な問題点】

  • 作成の負担:高齢で手が震えてしまう時や、体調が優れない時に、長文の本文を書き切るのは厳しい
  • 無効になるリスク:日付の記入漏れなど、法的に必要な項目がないと遺言書自体が無効となるリスクがある
  • 紛失・改ざんの恐れ:自宅保管の場合、発見されずに紛失したり、死後に破棄・改ざんされたりする危険がある

新しく導入されるデジタル遺言(正式名称:保管証書遺言)では、この全文を手書きというルールが大幅に緩和されます。
財産目録だけでなく、遺言書の本文すべてをPCや、スマホの音声入力機能を使って作った「デジタルデータ」として作成し、正式な遺言書として遺すことができるようになります。
これにより、これまでの手書きに伴う大変さや不安が一気に解消されることになります。

デジタル遺言は「いつから」使える?最新スケジュール

「スマホで手軽に作れるなら、今すぐ親と一緒にやってみたい」と思われるかもしれませんが、実は今すぐには使えません。
制度が実際にスタートするまでには、いくつかの段階的なスケジュールが組まれています。

デジタル遺言の本格スタートは「2029年頃までに」

法律はすでに成立したものの、実際にスマホやPCで利用できるようになるのは、2029年頃となる見通しです。

遺言書への押印廃止は一足早く「1年以内」にスタート

デジタル遺言の開始に先駆けて自筆証書遺言への押印義務が廃止されます。

これまでの自筆証書遺言では、押印が無いとその遺言書は無効となっていましたが、今後は「署名」だけで良い、というルールに変更となります。
ただし、押印が不要になっても「本文はすべて手書きする」という基本ルールは維持されますのでご注意ください。

「公正証書遺言」のデジタル化はすでに開始済み

公証人が間に入って作成する、最も安全性の高い「公正証書遺言」については、すでにデジタル化(オンライン化)がスタートしています。

これにより、カメラ付きPCでWeb会議システムを利用して、自宅や病院にいながら公証人と面談し、電子署名を使って公正証書遺言を作成できるようになっています。

「今すぐデジタルを活用して確実な遺言を作りたい」という場合は、この公正証書遺言のオンライン作成を利用するのが現時点で最も現実的な選択肢となります。

デジタル遺言作成の大まかな流れ

制度が本格的に始まった後、どのような手順で作成することになるのか、現時点で予定されている大まかな流れは以下の通りです。

  • PCやスマホで遺言書の本文(データ)を作成する
  • 本人のものであることを証明する「電子署名」などを行う
  • 法務局へオンライン・郵送で申請する
  • 法務局(またはWeb面談)で、本人が遺言書の「全文を声に出して読み上げる」

最大のポイントは、4つ目の「本人が全文を読み上げる」というステップです。
デジタルデータは他人のなりすましやAIによる偽造のリスクが高いため、このような厳格な本人確認を経て、正式に法務局に保管される仕組みになる予定です。

デジタル遺言4つのメリット

デジタル遺言がスタートすると、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。
親世代の「書きやすさ」だけでなく、財産を引き継ぐ子世代の「手続きのラクさ」も含めて4つのポイントがあります。

  • メリット①:「全文手書き」の身体的負担がなくなる
  • メリット②:修正が何度でも簡単にできる
  • メリット③:紛失・改ざん・隠匿のリスクが減る
  • メリット④:相続後の家庭裁判所での「検認」手続きが不要になる

メリット①:「全文手書き」の身体的負担がなくなる

本文の手書き義務が無くなるため、長文を書き続けることによる身体的負担がなくなり、ご自身のペースでゆっくりと内容を考えながら作成できます。

メリット②:修正が簡単にできる

手書きのように「間違えたから最初から全部書き直し」という手間がありません。
データであれば修正箇所だけを打ち直せば良いため、スマートに変更や追加ができます。

メリット③:紛失・改ざん・隠匿のリスクが減る

遺言書は法務局で安全にデータ管理されるため、自宅保管のように 「死後に見つけてもらえないかも」「誰かに捨てられてしまう」といったトラブルの心配がなくなります。

メリット④:相続後の家庭裁判所での「検認」手続きが不要になる

通常の自筆証書遺言(自宅保管)と違い、本人が亡くなった後の家庭裁判所での「検認」手続きが不要になります。
銀行口座の凍結解除などの手続きを相続人がスムーズに進めることができます。

【重要】「簡単そう」に潜む落とし穴と注意点

相続専門税理士の目線からみると「手軽に作れるからこそ大きな落とし穴」があります。実際に利用する前に必ず知っておくべき3つの注意点を整理しました。

  • 注意点①:高齢の親に「一人でやらせる」のはハードルが高い
  • 注意点②:法務局は「中身が正しいか」まではチェックしてくれない
  • 注意点③:遺言書作成とは別に、適切な「相続対策」の検討が必要

注意点①:高齢の親に「一人でやらせる」のはハードルが高い

先述の通り、最終的には「法務局の職員の前で全文を読み上げる(口述する)」という手続きが必要です。
年齢を重ねて喉の調子が悪かったり、認知症の初期症状があったりすると、この手続きをスムーズに進められず却下されてしまうリスクがあります。
スマホ操作や法務局への同行など、子世代のサポートが必要となるケースが多いでしょう。

注意点②:法務局は「中身が正しいか」まではチェックしてくれない

法務局の職員が確認するのは、あくまで「本人の身元」と「なりすましではないか」という点だけです。

以下のようなミスがあったとしても、そのまま保管されてしまいます。

  • 記載ミスによる手続き不可:不動産の住所や銀行の口座番号の記述が曖昧で、相続後の名義変更が受け付けてもらえない。
  • 遺留分の侵害:特定の相続人だけに「全財産を相続させる」と書いてしまい、将来他の相続人と争いになってしまう。
    ※遺留分とは、法定相続人(兄弟姉妹以外)に最低限保証された遺産取得分です。

注意点③:遺言書作成とは別に、適切な「相続対策」の検討が必要

デジタル遺言によって「遺言書を形にする手続き」自体はとても簡単になります。
それはあくまで書類の作り方が便利になっただけであり「残された家族にかかる相続税をどう抑えるか」「どう分ければ円満に資産を引き継げるか」という相続対策は、別途しっかりと検討しておく必要があります。

制度開始を待つべき?今すぐできる相続対策

「デジタル遺言が便利そうだから、新制度が始まるまで遺言を書くのは待とう」と考える方もいらっしゃるでしょう。
しかし、相続専門の税理士としては、制度の開始を待つことはおすすめしません。

理由は非常にシンプルで「いつ、何が起こるかわからないから」です。

万が一お亡くなりになるケースはもちろんですが、デジタル遺言が本格的に使えるようになるまでの間に、もし認知症などが進行して意思能力(自分の意思を正しく判断する能力)がないとみなされてしまうと、遺言書自体が作れなくなってしまいます。

そのため、次のような方法で遺言書の作成を始めることをおすすめします。

現行の「自筆証書遺言書保管制度」を活用する

「本文を手書きする」手間はありますが、書いた紙の遺言書を法務局へ保管する制度があります。
この制度を活用することで、遺言書の紛失リスクがなくなり、相続後の検認も不要です。(財産目録はPC作成可能)

すでにデジタル化されている「公正証書遺言」を利用する

公証人が作成する「公正証書遺言」については、すでにオンライン化の手続きがスタートしています。
ただし、実務上はスマホでの手続きは不可で「カメラ付きPC」の用意が必要です。

さらに、「マイナンバーカードによる電子署名」や「証人2名のWeb会議同席」、公証人による事前の意思確認など、厳格な要件をクリアしなければなりません。
ある程度の事前準備は必要ですが、現時点で利用できる確実性の高い選択肢です。

まとめ

デジタル遺言の導入によって、遺言書作成の手続きや保管にかかる負担は軽減されます。
しかし、作成方法がデジタル化されても、「誰にどの財産をどのように引き継ぐか」という遺言書の中身や、それに伴う相続税の課題が解決するわけではありません。
残されたご家族の負担を最小限に抑え、確実な資産承継を行うためには、税務や法務の視点に基づいた事前の設計が不可欠です。

当センターでは、将来のデジタル化も見据えつつ、 現時点での最適な相続対策をサポートしております。
将来への備えとして、どうぞお気軽にご相談ください。

 

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当コラムは記事作成時の法令等に基づいています。 税務関連記事内では、一般的事例としての取り扱いを記載しております。例外や特例を含めすべての事例について詳細に記したものではありません。 最終的な税務判断においては、税理士または税務署へご相談ください。 また、当コラムに掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

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